Leseprobe
2-1 CO概要
アレックスは自分の席に座り、トレーニングマニュアルを開き、読み始めました。SAPの概要、SAPの導入効果から始まり、SAPへのログオン方法も詳細に説明されていました。アレックスは早く実機のSAPを触ってみたいと思いましたが、まだユーザの準備ができていないので、我慢するしかありませんでした。次のページからSAPの各業務モジュールの説明がされていました。
2-1-1 SAPの業務モジュール
MM(在庫・購買管理)
MMは材料の購入や在庫管理を行うためのモジュールです。MMを通して、生産活動に必要な材料を仕入れることができます。SAPでは材料等の品目が移動、消費されるごとに必要な会計仕訳が自動で作成されます。また、製品の製造が完了すると、システム上、その製品が出荷可能な状態になります。そうした在庫管理もMM上で行われます。
発注、入庫、仕入先からの請求書の受取までをMMで管理しています。その後、支払条件に従って、仕入先への支払が行われますがこれはFIモジュールの範囲になります。この流れをProcure to Payサイクルと呼びます。
アレックスは前職のFLWを思い出しながらメモを取りました。
PP(生産管理)
PPは生産計画を立てるためのモジュールで、MRP(Materials Requirement Planning)という機能を使用して、受注、需要予測、利用可能在庫を考慮した、製品の製造計画と材料の調達計画を作成します。その計算量は膨大ですが、考え方はシンプルで、製品がいつまでに何個必要かという情報から、製品をいつ作り始める必要があるか、材料をいつ仕入先に発注する必要があるかといったことを逆算していきます。その計算には、品目マスタやBOM、作業手順といった様々な情報を使用します。
また生産計画だけでなく、製造指図やプロセス指図を使用して、生産実績や個別の進捗状況も確認することができます。指図に従って材料や半製品を投入し、その内容をシステムに登録すると、それに沿った会計伝票が自動生成されます。
アレックスはFLWで使用していたシステムを思い出しながら読み進めていきました。
SD(販売管理)
SDは引合、見積、受注、出荷、請求といった販売活動を管理するモジュールです。請求書を送付後、得意先から入金があると一連のサイクル(Order to Cash)が完了します。
アレックスは出荷、請求、入金のときになんらかの会計伝票が自動登録されるはずだとあたりをつけました。
FI(財務会計)とCO(管理会計)
材料や製品の入庫や出庫、また、債券や債務の増減があるたびに、SAPでは会計伝票が自動で登録されます。そして、会計伝票の内容は総勘定元帳(GL)、仕入先毎の補助元帳(AP)、得意先毎の補助元帳(AR)へ反映されます。また、セグメント別の損益計算書を作成するための利益センタ会計というCOのサブモジュールにも反映されます。
アレックスはサプライチェーンにおける業務とそれを支えるMM、PP、SDとの関係を概ね理解できたので、各業務でどのような仕訳を切らないといけないか想像がつきました。会計伝票の自動登録の仕組みはとても合理的だと思われましたが、まだCOの位置づけについてはあやふやなままでした。
COは以下のサブモジュールで構成され、内部会計の顧客要件を実現するためのモジュールです。
- 原価要素会計(CO-CEA)
- 原価センタ会計(CO-CCA)
- 間接費管理(CO-OM)
- 活動基準原価計算(CO-ABC)
- 製品原価管理(CO-PC)
- 収益性分析(CO-PA)
SAPは統合されたシステムで、FIとCOもその一部を担っています。次の章ではロジモジュールとFI、COとの関係を説明します。
なお、PS(プロジェクトシステム)という、システム構築プロジェクトの管理やプラントや船などの完全受注生産の業種で使用されるモジュールもあります。自社工場の建設費用をPSで管理し、完成後にFIで固定資産として管理するといった使い方もできます(FI-AA)。
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